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伊刈光汰は、どこにでもいる普通の高校生だった。 成績は中の中、中学まではバスケ部に所属していたため運動神経も悪くない。
陽気な性格で友達も大勢いた。
特徴といえば、正義感が人一倍強いことか。
特に何不自由ない人生。
しかし転機は訪れる。
あれは二か月前、しんしんと雪降る放課後のことだった。
光汰が商店街の横断歩道を渡ろうとしたとき、一台の車が高速で迫っていた。
しかし、横断歩道は既に歩行者が一人渡っている。光汰のクラスメイト『梅山藍』が。
運転手はよそ見をしていたのか、慌ててブレーキを踏むが――
「――危ないっ!」
光汰が飛び出す。
「え?」
藍は目を見開き、目前に迫る車をただ見つめるだけだった。
そして、
「――っ!」
藍を突き飛ばし車に跳ねられた光汰は、強烈な衝撃に意識を手放すのだった。
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