319人が本棚に入れています
本棚に追加
/238ページ
「あぁやっぱり! 影仁さんだぁ。こんなとこで会えるなんて嬉しい」
その娘は嬉しそうに満面の笑みを浮かべると、影仁の腕に抱きつこうと手を伸ばした。
しかし、影仁は最小限の動作で回避しため息をつく。
「……何の用だ」
「えぇ冷たい……」
その女子はショックを受けたようにのけ反ると、頬を膨らませた。
ちなみに、智也と直人は口をあんぐりと開け硬直している。
「ちょちょちょちょちょっとぉっ! 影仁の知り合い??」
直人が目を白黒させて割り込んだ。
「はいっ。天前中学校の弓岡由夢っていいます」
由夢はニコニコしながら自己紹介する。
そこに智也も加わり、鼻の下を伸ばしながら自己紹介を始めた。
彼らの様子を見てすぐに、影仁は家の方へ歩き出す。
「ちょっと影仁?」
気付いた智也が声をかけるが、
「俺は今から用事がある」
影仁はそう言って立ち去った。
「ざんねんです……」
由夢は残念そうに肩を落としながら友人たちの元へ戻っていく。
合流した彼女ら三人組は「由夢ちゃん、あんなカッコいい人と知り合いなんだね」ときゃっきゃとはしゃぎながら駅のほうへ歩いていった。
そして、その場に取り残された智也と直人は、しみじみと呟くのだった。
「「影仁の友達で良かった……」」
最初のコメントを投稿しよう!