第六話 激突、鬼を狩る者たち

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 光汰と影仁は弾かれたように振り向く。  公園の入り口にいたのは、黒の戦闘服を身に纏い背中に刃幅の広い大剣を背負った大男『成田清悟』だった。  同時に草むらをかき分ける音と銃器を構える音が多数。 「そこを動くな」  清悟が緊張に強張った表情に強い眼光で影仁を睨みつける。  そして、草むらの奥から何かが放り投げられる。  光汰が見ると、それは心臓を破壊され瀕死の獣鬼だった。その荒々しい息づかいは「死にたくない」と訴えているかのようだった。そしてすぐに息絶える。 「え……」  光汰が訳も分からず混乱していると―― 『桐崎、飛鳥に嵌められた。早急にこの場から離脱する』  影仁が小声で通話を始めた。 『なにっ!? 了解した。すぐに援軍を呼ぶ。それまで持ちこたえてくれ!』  桐崎の切迫した声がインカム越しに響く。 『で、でも、どうやって……』  震える声で光汰が問う。その足も震えていた。運悪く、雅人は今日用事があると言って不在だった。呼んでも来れるかどうか……  影仁は慌てず身動き一つとらずに光汰へ言った。 『今から俺の言う通りに行動しろ。まずは――』  その作戦を聞いた光汰は目を見開く。とは言っても仮面で隠れてはいるが。 『そ、そんなことできるわけ……』 『いいから言う通りにしろ。お前は邪魔なんだ』  光汰はぐっと奥歯を噛みしめ覚悟を決めた。そして光汰が頷くと同時に影仁が弾丸の如く飛び出した。草むらの奥で銃を構える三人の戦闘員へ。 「うっ」  戦闘員たちはあまりのスピードに怯んだものの、発砲を開始する。  だが影仁には当たらない。銃口から着弾点を予測し左右へジグザグに走っているのだ。その分、距離は一向に縮まらない。  側面の戦闘員も同様に影仁へ銃を向ける。ただ、あまり上段を狙うと向かいの味方へ直撃するためか足元へ銃口を向けていた。  戦闘員たちが影仁に気を取られている隙に―― 『影仁さん、すみませんっ!』  光汰は駆け出した。包囲網の右側面へと。戦闘員が二人。最も手薄なそこから逃走しろというのが影仁の指示だった。  もちろん光汰が向かう先の戦闘員たちは慌てて銃を向けるが、光汰は背を屈め、がむしゃらに突進した。 「くっ、コイツも速い!」  銃は奇跡的にも光汰の体を掠めるだけだった。  あっという間に戦闘員たちへ肉薄し、彼らを押しのけ光汰は無事逃走を果たしたのだった。
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