319人が本棚に入れています
本棚に追加
/238ページ
咄嗟のことに動けず、なにより信じられず、硬直する光汰。
(な、んで?)
――スパァン!
極細の一閃。
獣鬼の首は宙を舞った。吹き出す鮮血と共に。
「油断しないで」
冷たい瞳で呟き、レイピアに付いた血を払う薫。
しかし、光汰の頭は数刻前の記憶に支配されていた。
不自然な挙動の若い男、ズレた眼鏡、ぶつかった和馬。
それらから導き出される最悪の解。
和馬は獣鬼と接触し、その匂いが獣鬼の体に残った。夜、覚醒した獣鬼は、スーツに付いた匂いを頼りに和馬を探し、捕食した。
つまり――
「あのとき、俺が獣鬼だと気付いていれば……」
光汰は呟き、頭を両手で押さえ――
「――う、うぁ、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
それからすぐに、光汰は不登校になった。
最初のコメントを投稿しよう!