第十二話 生か正義か

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第十二話 生か正義か

 第十班のメンバーである「一之瀬」と「倉橋」の遺体が見つかって三日。  ムサシ中北支部の事務所では重苦しい空気が漂っていた。第七班の三人も半鬼狼や死鬼に関する手がかりを掴めないでいる。  第七班の三人は、早朝の会議室で次に打つべき手を考えあぐねていた。 「……正直、手詰まりですね」  姫川が眉間に皺を寄せ呟く。向かいに座っている悠哉も硬い表情で頷いた。 「はい。今はとりあえず、がむしゃらに動くしかないんですかね……第十班の平子さんなんて、あれから三日間、毎晩徹夜でパトロールしているようです」  姫川は弱々しくため息を吐く。 「別に、ただ動き回っていればどうにかなるわけではありません。平子さんであれば、いつかは死鬼と遭遇できるかもしれませんが、私たちの調査に関してはスピードが求められます。無駄に動いても意味がありません」  姫川は悠哉へ正論を突き付けるが、その表情は晴れない。分かっているのだ。正攻法で進めてこの状況なのだと。 「そうは言っても、今こうしている間にも犠牲者が……あれ?」  悠哉がなにかに気付いたように顔を上げた。  それまで黙って調査レポートと睨めっこしていた清悟がふと悠哉を見る。 「どうした?」 「あ、いえ……そういえば、半鬼狼や死鬼って昼間はなにしてるのかなって思いまして」  清悟の期待するような視線にさらされた悠哉は少したじろいだ。 「彼らが獣鬼であれば、昼間は夢遊病のような状態のはずですが、それがなにか?」  姫川も悠哉をまっすぐに見ていた。普段であれば、当たり前のことを聞くなと一蹴する姫川も、今は手掛かりになりそうなものを見つけることに必死だった。
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