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第十三話 死闘の果て
姫川が『伊刈光汰』の情報を掴んだ次の日。
出社して早々に清悟のデスクへ駆け寄る姫川の姿があった。ムサシの始業時間より一時間は早かったが、事務所には若手社員や管理職の多くが既におり仕事の準備をしていた。
「リーダー!」
姫川は挨拶もせずに慌てた様子で声を上げる。周囲の同僚たちは、冷静さを欠いた彼女の様子に驚きを隠せず互いに目を見合わせた。
「……その様子だと知っているようだな」
清悟は、姫川の様子をさも当然だというように、慌てることなく見つめ返した。
「ええ。例の少年が『通り魔』にあって亡くなったと……」
姫川は慌てた様子から一転。目を伏せ、声を震わせる。
清悟も落ち着いているものの、沈痛な面持ちでため息をついた。
「ああ。こんな事態、予想だにしなかった。とりあえず、もうすぐ内村も出社して来る頃だろう。昨日の件も含め一度情報を整理しよう」
姫川は力なく頷いた。
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