第三話 鬼を狩る組織

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第三話 鬼を狩る組織

 また死骸が発見された。  そこは都心から北に離れた『ムサシ中北支部』の中層ビル。二人の男性社員と一人の女性社員が会議室で午前ミーティングを行っていた。 「ひどいものですね。頭部が粉々だなんて」  顔をしかめながら手元の資料に目を通している若い男は『内村(うちむら)悠哉(ゆうや)』。  ワックスで七三分けにした黒髪に、あどけなさが残る顔立ち。紺のスーツを着こなす彼には若者としての清潔感と新人のような初々しさがあった。事実、民間警備会社『ムサシ』に入社して三年目になる。その情熱と正義感に加え高い身体能力を買われて、今年から特別生物災害対策グループ『飛鳥』の一員となった。  彼の所属する『飛鳥第七班』は、リーダーの『成田清悟(なりたせいご)』、班員の『姫川(ひめかわ)(あや)』、『内村悠哉』の三人だけだった。 「あなたは文字が読めないのですか。対象は人ではなく『獣鬼』です」 「もちろん分かってますよ、姫川さん。でも、たとえ人でなくてもショックです……」  悠哉は、向かいで呆れたように首をかしげた『姫川彩』に反論する。姫川は切れ長の目に鼻は細くショートヘアが似合う女性だ。年齢は二十代後半だが、普段から笑み一つ見せず言葉も尖っているため、相当なベテランに見える。性分なのか、誰にでも棘のある言い方をしてしまう。後輩である悠哉には特に容赦がない。
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