319人が本棚に入れています
本棚に追加
/238ページ
第五話 戦士たちの日常
二つの黒い影が夜風を切る。
首尾よく獣鬼を始末した彼らは、『飛鳥』から逃げ、拠点へ戻るところだった。
(やった……俺がやったんだ。ついに獣鬼を倒したんだ)
光汰は初めて獣鬼を倒した。
影仁のフォローはあったものの、偃月刀でトドメをさした。
――しかし、光汰の胸に去来したのは一抹の虚無感だった。
(なんなんだ……この感覚……)
自分が倒したのは絶対悪のはず。
なのに、何故虚しさを覚えるのか、光汰には理解できなかった。
ただ、今でも、その感触が残っている。
人の……獣鬼の胸を突きさす感触が。
(でも、あれを殺さなければ被害者が増えていたはず……)
そう思って胸のざわめきを鎮めようとする。
それでも光汰は、自分のしたことが本当に正しいのだと、言い切れる自信がどうしても持てなかった。
最初のコメントを投稿しよう!