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次に光汰が目を覚ましたのは、白いベッドの上だった。
家族や友達は泣いて喜んだ。
しかし、光汰へ告げられた現実は残酷だった。
脊髄損傷による全身麻痺。
光汰は自分の耳を疑った。
まだ16歳の少年が一生寝たきりの生活を強いられるのは酷だ。
(ちくしょう! なんで俺がこんな目に……)
ただただ呪う。現実の理不尽さを。
それから光汰はその晩、枕を涙で濡らした。
しかし、全てが悪い方向に進むわけではない。
翌日、『梅山藍』が見舞いに来た。
「私のせいで……ごめんなさい、伊刈くん。でも、助けてくれてありがとう」
彼女は辛そうに微笑みながら頭を下げる。
クラスメートではあるが、目立たず大人しい彼女とはほとんど接点はなかった。
それでも彼女は、毎日のように見舞いに来た。
藍の真心こもった献身に、光汰の心も少しずつ癒されていく。
(あぁそうか。俺は人を助けたんだ。それなら後悔しちゃだめだな)
――それから数週間たったある日の夜、その男は現れた。
半人半鬼の仮面を被った『黒野影仁』が。
彼は、悲惨な状況にあってなお瞳の輝きを失わない光汰に問うた。
「お前に意志はあるか? どんな逆境だろうと闘い抜く強い意志が」
光汰はゆっくりと頷く。
そして、影仁は半鬼化薬を光汰の脊髄へと注入し、新たな半鬼狼が誕生した。
すぐに退院し、医者や知人たちが心底驚いていたが、脊髄損傷は医師の勘違いだったというように情報操作された。『大山功』の手によって。
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