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第六話 激突、鬼を狩る者たち
彼らは、人気のない路地裏を走っていた。
冷気が頬を撫で、静寂が戦いの緊張感を増大させる。
(また殺すのか人を……いや違う。獣鬼だ)
光汰は湧き上がる不安を振り払うべく必死に走っていた。
背には相棒の『偃月刀』、前には憧れのリーダー『黒野影仁』の背中がある。それでも光汰は謎の恐怖感に支配されつつあった。
「そろそろ報告のあった公園だ」
影仁が『インカム』を通して桐崎へ呟く。彼らはその夜、獣鬼出現の情報を掴み急いで駆けつけた。
目的地へはすぐに到着する。
そこは街の隅にある公園。
影仁と光汰が辺りを見回すが獣鬼の姿はない。ただ、血痕と激しく争った跡がある。
光汰は僅かな違和感を感じ桐崎へ報告する。
「桐崎さん、目標の姿が見えません。ただ、奴が暴れた跡はきっちり残ってるのに『被害者の姿もありません』」
『なに? 少し捜して見当たらなかったら、街へ出てくれ。手遅れになるかもしれない』
光汰は「はい」と短く返事をし、影仁へ何かを言おうと口を開くが、
「――静かにしろ」
影仁は切るように呟き、ある一点を凝視した。
そのただならぬ雰囲気に、光汰は反射的に口を手で押さえる。
「……」
そして耳を済ませていると――
「……なんですかこの息づかい」
光汰が小さく呟く。人のものとは思えない荒々しい息づかいが聞こえてきたのだ。
影仁は答えることなく、ずっと凝視していた公園の奥の草むらへ歩いていく。慎重に。
「――見つけたぞ、半鬼狼っ!」
突然、彼らの後ろで男の声が上がった。
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