第一話 半人半鬼

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 ――――――――――  早朝の教室は若々しい声で活気溢れていた。高校三年生にもなって落ち着きがない。しかし黒野影仁はその雰囲気にのまれることなく、廊下側の隅で目の前の友達のやりとりを静観していた。そんな中、影仁にとって無視できない単語が窓際から耳に入る。 「ねえ、知ってる? 『鬼』のウワサ」 「え~なにそれ」 「えっとね……」  女子生徒が嬉々として話そうとすると影仁が見ていることに気付く。影仁は目が合っても逸らさず、話の続きを待っていた。 「あっ……」  彼女は慌てて目をそらし俯いた。 「ん? どうしたの。ねぇ、早く続き……えっ?」  もう一人も気づいた。影仁が彼女たちに無機質な瞳を向けていることを。その不思議な雰囲気からか、まるで自分たちが禁忌を犯したのではないかと錯覚すらしてしまう。 「ちょ、ちょっと廊下に出よっ」  先に限界を迎えたのは彼女たちだった。二人とも何かやましいことがあるかのように、そそくさと教室を出る。  影仁は知りたかった。本来、闇夜を徘徊する怪物『獣鬼(じゅうき)』の情報は国家レベルで秘匿されている。それを知っているのは、行政の防災担当から警察や警備会社、一部の医療関係者ぐらいのものだ。影仁のような『例外』もあるが……
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