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モノクロの小説とは何か……?
例えば、漫画で「机の上のりんご」をモノクロで表現しようと思えば、
白い紙に黒いペンで机とりんごを描けば、いいのです。
色を塗らない代わりに、りんごを持ったときの質感や重さ、りんごが転がったときの音や、そのりんごと机がある空間の雰囲気までもが、十二分に表現されてしまうのではないかと思うのです。
十二分に表現された結果、読者の手元に架空の世界があるという現実があると同時に、読者は現実世界の裏にある架空の世界に入っていけるのです。
では、言葉ではどう表現すればいいのか。
例えば、「木の机の上に赤いりんごがある」と表現してみましょう。
これでは駄目です。色があるのです。具体的には茶色と赤。
では、こうしたらどうでしょう。
「机の上にりんごがある」
これでもまだ駄目なのです。読者のほとんどはりんごも机も知っています。
赤いりんごを想像する読者もいれば、緑色のりんごを想像する読者もいるのです。これではかえって色が増えてしまいました。
では、どうすればいいのか……?
「歪んだ円に楊枝が刺さったかのような影がある」としてみましょう。
この文章に色を塗れる読者は少ないでしょう。
ですが、「机の上のりんご」だとわかる読者も少ないでしょう。
では、どうすればいいのか……?
この手紙は、言葉のモノクロ表現を探求するレポートになるでしょう。
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