52人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
「コンクール、どうだった?」
萌歌の顔が更に引きつって、私は視線を下に反らした。
そんな顔してほしくない。
そんな顔をするのならもう見たくなかった。
「えっと…銀賞、だった…。
あの強豪校にはやっぱり敵わなかったけど…」
「でも、今までそこまでいったことなかったじゃん!おめでとう!」
再び笑みを浮かべると、萌歌は少し微笑んだ。
本当はすごく嬉しいはずなのに、私に遠慮して悲しそうにしている。
コンクールに出る事が出来なかった私を哀れに思って。
「やっぱり、私よりももう一人のフルートパートの子のほうが上手かったもんね…。
だから成功したんだよ」
私がそう言うと、たっぷり間を開けて萌歌が訝しげに私を見つめた。
「…そんな、美音がいないから良かったみたいな事言わないで」
「でも、そうだよ。
練習の時だってずーっと足引っ張ってたし」
ガタリ、と萌歌が紙袋を机の上に置く。
手が震えているのが見えたけれど、私は続ける。
最初のコメントを投稿しよう!