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ピッ
思い返してテレビの電源を消した。
そろそろ急がないと、電車に遅れてしまう。
慌ててシュガートーストを口の中に放り込みクローゼットから取り出した衣服を身に付けると、
深い藍色のドアを開けて外に出た。
誰に言うわけでもなく、行ってきます、と小さく呟く。
錆びた鉄筋コンクリートの階段をリズミカルに降りて徒歩五分程度の駅へ向かう。
また階段を降りて地下鉄の改札をくぐり、
ちょうどやって来た電車に乗り込み三駅先で降りる。
これがいつもの日常。
雨の日、晴れの日、雪の日、いつ目覚めても、
毎日この朝が回ってくる。
駅から出ると、いつも通り一気に騒がしくなった街並みが広がっていた。
だけど、少しだけ違う所がある。
いつも動きを止めないこの駅前の人通りが、今日は皆同じ場所を見つめて足を止めている事に気付く。
私もそのほうに目を向けた。
それはいつもにない光景で、いつもにない朝の空気が訪れる。
目の前のビルにある大型屋外ビジョンに映っていたのは、
さっきテレビの話題になっていた曲の、MV。
東京の街並みに呑み込まれそうになる毎日を忘れ、
私は軽く目を閉じその音に再び耳を傾けた。
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