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「良かったね、萌歌」
「なんで…そう、言えるの…?」
怒られるかと思ったけれど、萌歌はそれを通り越して声まで震わせていた。
そして持っていた紙袋を机の上に叩きつけるように置くと、踵を返して部屋を出て行ってしまった。
「も、萌歌っ…!」
ハッとしてベッドから降り廊下に出てみたけれど
もう萌歌の姿はない。
ズキン、とどこかが鈍く痛んだ。
「っ、…」
更に増してくる痛みに耐えきれず、
足元から崩れ落ち、その場にうずくまる。
大丈夫。落ち着いて、と自分に言い聞かせた。
私は自分が思ってる事だけを伝えた。
本当は萌歌も思ってる事を言った。
何も、間違ってる事はないから。
悲しい事も、苦しい事も、ない…。
ふと、誰かが走ってくるような足音が耳に入った。
それは私の目の前で止まって、少しだけ息を呑んでから私の背中を優しく擦る。
「どうしたの?!…大丈夫?どこが痛い?」
頭上から聞こえた切羽詰まったような声に、ゆっくりと顔をあげた。
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