episode248 女王の帰還

14/30
前へ
/30ページ
次へ
テーブルに残された僕の手を 九条さんは躊躇いがちに握って 「少し庭を散歩する?」 ルカのつけた傷口にそっと触れた。 「それとも部屋へ行ってベッドに入る支度を手伝おうか?」 僕の答えは両方ともノーだった。 首を横に振りそっと手を引く。 「ごめんなさい。今夜はそっとしておいて」 征司に穢れていると言われた身体を 彼に触れさせることが今は悪夢のように思えた。 「和樹……」 「いい人間になろうとなんかしたから疲れちゃった」 落ち着いてきてようやく分かった。 僕だってさすがに――。 薫とまで交わってしまったことに ショックを受けていないわけじゃないんだ。 「泣いてる君を僕が放っておけると思うの?」 「大丈夫。泣いたのは慣れないことした反動だよ」 僕は軽く肩をすくめて 九条さんに背を向ける。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

73人が本棚に入れています
本棚に追加