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テーブルに残された僕の手を
九条さんは躊躇いがちに握って
「少し庭を散歩する?」
ルカのつけた傷口にそっと触れた。
「それとも部屋へ行ってベッドに入る支度を手伝おうか?」
僕の答えは両方ともノーだった。
首を横に振りそっと手を引く。
「ごめんなさい。今夜はそっとしておいて」
征司に穢れていると言われた身体を
彼に触れさせることが今は悪夢のように思えた。
「和樹……」
「いい人間になろうとなんかしたから疲れちゃった」
落ち着いてきてようやく分かった。
僕だってさすがに――。
薫とまで交わってしまったことに
ショックを受けていないわけじゃないんだ。
「泣いてる君を僕が放っておけると思うの?」
「大丈夫。泣いたのは慣れないことした反動だよ」
僕は軽く肩をすくめて
九条さんに背を向ける。
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