episode248 女王の帰還

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これ以上優しくされたら 僕は愚かしい自分をもっと呪うだろう。 「ホットミルクは?」 「いらない」 「ならクッキーは?」 「九条さんたら。僕は赤ちゃん?」 今ならまだ元のどうしようもない道化に戻れる。 それは楽で――かつ僕に一番ふさわしい生き方だ。 絡めた指先がほどける。 僕は足早にその場を立ち去ろうとした。 「和樹」 呼び止めないで――。 「なに?」 振り向きはしなかった。 どんな小さな表情の変化も見透かされそうで怖い。 「君はいい子だよ。どんな君でも――僕にとっては完璧に愛おしいんだ」 「おやすみなさい――九条さん。明日にはいつもの僕です」 僕はひとつあくびの真似事をして伸びをした。 真っ直ぐ前に進まなきゃ。 後ろから見た僕の肩、震えてなきゃいいけれど――。
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