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住む家が広いからいいってもんじゃない。
涙を隠して長い廊下を歩くのはけっこう大変なんだ。
ようやく自分の部屋に辿り着き扉を閉めてしまうと。
「アア……」
気が抜けて僕はドアに背中を預けたまま
その場にしゃがみこんでしまった。
だけどすぐに――。
「っ……!」
薄暗い部屋の中に人の気配を感じて縮みあがる。
なんせ僕を殺そうとした人間が屋敷に帰ってきてすぐだ。
緊張したまま目を凝らすと――僕のベッドの上。
「俺だ――殺人鬼でも吸血鬼でもないさ」
手元を照らす程度の明かりが灯る。
「征司お兄様……」
見れば殺人鬼より吸血鬼より怖い人が
僕のベッドに足を投げ出して。
「そ、それはっ……!」
「いつもながら随分無防備だな?和樹――」
僕がルカと連絡を取っていた証拠の
ノートパソコンを開いているとこだった。
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