episode248 女王の帰還

18/30
前へ
/30ページ
次へ
征司はベッドスタンドの紐を引く。 凍てついた僕の心とは裏腹 部屋はあたたかなオレンジ色の灯りに包まれた。 「お義兄様は?まんまとおまえの嘘を信じたのか?」 まるで可愛い悪戯を共有していた子供の頃と同じように。 声を潜めて征司が尋ねる。 「あの人は……」 きっと騙されてはいない。 意図的に見逃してくれただけだ。 「ま、あの男は物分かりのいいフリするのがお得意だからな」 「そんな風に言わないで……」 「でもこのメールを見たらどうだろうな?おまえが誘いをかけ、挑発して、もうやめてくれと言う男に無理矢理自分の血を与えてる」 「僕は……ルカがまともになったか試しただけ……」 「それじゃ薫のことも試したのか?」 「……」 「あいつと会わせたらどうなるか――おまえを抱かせたらどうなるか試したって言うのか?」 冷静な声音に図星を突かれた頭の中が 沸騰したようにぐらぐらと熱くなる。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

73人が本棚に入れています
本棚に追加