73人が本棚に入れています
本棚に追加
征司はベッドスタンドの紐を引く。
凍てついた僕の心とは裏腹
部屋はあたたかなオレンジ色の灯りに包まれた。
「お義兄様は?まんまとおまえの嘘を信じたのか?」
まるで可愛い悪戯を共有していた子供の頃と同じように。
声を潜めて征司が尋ねる。
「あの人は……」
きっと騙されてはいない。
意図的に見逃してくれただけだ。
「ま、あの男は物分かりのいいフリするのがお得意だからな」
「そんな風に言わないで……」
「でもこのメールを見たらどうだろうな?おまえが誘いをかけ、挑発して、もうやめてくれと言う男に無理矢理自分の血を与えてる」
「僕は……ルカがまともになったか試しただけ……」
「それじゃ薫のことも試したのか?」
「……」
「あいつと会わせたらどうなるか――おまえを抱かせたらどうなるか試したって言うのか?」
冷静な声音に図星を突かれた頭の中が
沸騰したようにぐらぐらと熱くなる。
最初のコメントを投稿しよう!