episode248 女王の帰還

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開き直る? 嘘を吐きとおす? それともいつもみたいに誘い込んでしまおうか? 僕の中に根付いた悪魔を征司は射貫くように見つめている。 「薫お兄様……僕のことを恨んでないって言ってた」 まずは現実逃避。 僕は目を閉じて美しいものだけに思いを馳せる。 温室に咲き誇る花々。 手のこんだヨーロピアンレースのクロス。 おろしたての真っ白なガウンや 果樹園にたわたに実ったブドウ。 薫が奏でるバイオリンの美しい音色。 綺麗な鳶色の髪と同じ色した憂鬱な瞳。 どこまでも白い肌。 それから? それから――白い肌を滴る鮮血。 『俺の血で……汚れちまった……ごめんな』 驚くほど優しい声音がよみがえった瞬間――。 僕は窒息しそうな息苦しさを覚え胸を掻き毟った。 ようやく 悪夢から覚めた僕は――。 「僕はなんてこと……なんてことしてしまったんだろう……」
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