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相手が薫でなければ正直
ここまで罪悪感を抱かなかったような気もする。
僕は己の愚かな好奇心のために
穢してはいけないものに手をかけた。
決して踏んではいけない境界線を
いとも容易く超えてしまったんだ。
「あいつが死んだらおまえの責任だ」
追い打ちをかけるように
征司は僕の目を見てはっきりと言い放った。
「もしそんなことになればおまえをこの家から追放するしかない」
「え……」
それは家長として兄として迷いのない決断だった。
少なからずショックを受けたことは否定のしようもない。
でもまだこの時。
僕は思ってたんだ。
「そんなことになるはずないよ……出血量のわりに傷は浅かったって。死ぬはずない。明日迎えに行ったらきっと一緒に帰れる」
そう本気で思ってた。
この時は何も起こらないって。
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