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征司が部屋を出て行って――。
いや正確には僕が癇癪を起して追い出したんだ。
それから長い間熱いシャワーを浴びた。
シャワールームを出た後経ち眩むほど。
僕は何かを洗い流したかった。
コントロールできない己の悪意か。
救いようのない失態か。
それでもまだのうのうとしている感情の一部か。
鏡に映る僕は綺麗だ。
罪のない子供のように頬を上気させ
何もなかったかのようにこちらを見つめ返してくる。
そういうえばルカも薫も無防備なほど澄んだ瞳をしていた。
悪魔というやつはきっとこの手の瞳をした人間が好きなのだ。
頭の中が整理できない。
今の僕に必要なのはきっと安定剤だ。
それと明日の朝まで何があっても目覚めない強力な眠剤。
中川はくれないだろう。
そんなこと言ったら大騒ぎして医者を呼ばれるのがオチだ。
そこでふと思いつく。
もしかしたら薫なら――。
せめて片方だけでも――あるいはどちらも持ってるかもしれない。
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