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ベランダへ続く窓の向こう。
僕は恐怖に凍り付いた。
そこにはよく磨かれた窓に張り付いて
食い入るように部屋の中を見回す奇怪な聖職者の姿があった。
「ルカ……」
黒いマントが夜風にひるがえり
ブロンドの髪は見事に逆立ち
何事か呟いているのか――。
真っ赤な口を開けば
もはや人の物ではない極端に尖った牙が見え隠れする。
しかしもっと奇妙なのは彼が僕を見ていないことだった。
面と向かう形で部屋の真ん中に座っている僕が
目に入ってはいないのだ。
「……オル……」
やがて
吹き付ける風の音の合間を縫うように
「カ……オル……」
ルカが薫の名を呼び続けているのが分かった。
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