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しかし僕が本格的な悲鳴を上げるより先に
ここにはいないと踏んだんだ――。
ルカは突然くるりと踵を返すと
何か思い立ったように駆け出した。
そしてあっという間――。
ベランダの手すりを跨ぎ
2階まで伸びた楠の木の枝に腕を伸ばすと。
黒いローブを身体に巻き込むようにして
大木に飛び移り夜の闇に姿を消した。
「な……なんなの……」
僕は情けなくも腰を抜かしたように
気づけばアームチェアーから床に滑り落ち
床にぺたんと座り込んでいた。
シャワーを浴びたばっかりなのに
背中は冷たい汗で容赦なく濡れている。
だけど
こうしちゃいられない――。
なんとか椅子の肘掛につかまって体勢を立て直す。
ここに薫がいないと知ってあいつが諦めるか?
いいや決してそんなことはないだろう。
それならルカが次に向かう先は?
「病院だ……」
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