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「君に放っておいてと言われて、そうできると僕だと思うの?」
がっちりと掴まれた手首。
九条さんは溜め息交じり低い声で言った。
「無理だよ。君が諦めてくれ。和樹」
「放して……」
振り切れない握力で
そのまま僕を引き寄せ九条さんは強引に唇を奪った。
「ンンッ……!」
その瞬間。
雪崩を起こしたように
僕の中に流れ込んでくる彼の深い愛が――。
「僕のせいなの……」
自ずと口を開かせる。
「僕が全部仕組んだんだ。ルカを誘惑して狂わせ……危険だと知りながら薫と引き合わせた……」
唇すれすれに囁かれる悪魔の告白に
美しい恋人は形のいい眉を顰める。
「軽蔑したでしょう?僕は何も変われなかった」
視線を外さないのは怖いからだ。
僕が目を離した瞬間
彼の瞳に浮かぶやもしれぬ嫌悪の色が――。
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