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だけど予想に反して
「分かっていたよ。君が裏で色々していたことぐらい」
「え……?」
「でも初めて君が考え、迷いながら善悪の狭間で揺らぐ様を、僕は黙って見てることにしたんだ」
その瞳はこれ以上ない優しさを讃え
僕の世界を再び真っ白に塗り潰した。
「ウソ……」
「初めて歩き出した赤ちゃんが、どこへ向かって行くのかなんて分からないものな」
完全な一人相撲。
そして僕は負けた。
「でもまさか、薫くんとあんなことになるとはね――」
「そうだ……薫!」
言われてはっと我に返る。
「九条さんお願い、今すぐ車を出して!」
ああ、そうさ。
僕はまだ一人じゃ歩くことすらできないから。
「ウソだろ、まだ何かあるの?」
「残念だけど急いで」
僕は九条さんの手にすがった。
そう、いつも通りにね――。
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