episode248 女王の帰還

4/30
73人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
レモン水だけか――。 こんな時なのに少しお腹がすいていた。 中川の奴――。 せめてアーモンドかドライフルーツでも 置いて行ってくれれば少しは頭が回るのに。 「和樹……?」 九条さんが不貞腐れて項垂れる 僕の顔色を窺うように覗き込む。 「……おい!」 だけどブシュロンを嵌めたゴージャスな右手は ついに痺れを切らし僕の胸倉を掴み上げた。 「口が利けないなら、おまえの穢れた身体に聞いてやろうか?ああ!?そうするか!」 「やめろって……!」 九条さんの制止を振り切り 征司は僕の身体を揺さぶった。 「この馬鹿がっ……!」 僕の代わりにレモン水の入ったグラスが先に ぶるぶると震えて汗をかく。 僕はちっとも堪えやしなかった。 だってそうだろ? あんな映像が流れちゃったら こうなるのは当然の成り行きだもの――。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!