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レモン水だけか――。
こんな時なのに少しお腹がすいていた。
中川の奴――。
せめてアーモンドかドライフルーツでも
置いて行ってくれれば少しは頭が回るのに。
「和樹……?」
九条さんが不貞腐れて項垂れる
僕の顔色を窺うように覗き込む。
「……おい!」
だけどブシュロンを嵌めたゴージャスな右手は
ついに痺れを切らし僕の胸倉を掴み上げた。
「口が利けないなら、おまえの穢れた身体に聞いてやろうか?ああ!?そうするか!」
「やめろって……!」
九条さんの制止を振り切り
征司は僕の身体を揺さぶった。
「この馬鹿がっ……!」
僕の代わりにレモン水の入ったグラスが先に
ぶるぶると震えて汗をかく。
僕はちっとも堪えやしなかった。
だってそうだろ?
あんな映像が流れちゃったら
こうなるのは当然の成り行きだもの――。
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