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Ⅲ・千綾玲華は苦い天使
チョコレートを食べて。それは僕にとって、ある意味「死ね」と同等の意味をもつ。
「いや、千綾さん。君が僕の事を好きなのは嬉しい。でも、アレルギーだと知っててチョコレートを贈るのは」
「それは、私の愛の証なの!私の、あなたへの愛を証明してくれる……」
会話になってない。僕を縛ったことといい、彼女の思考は僕の理解の範疇を越えている。
「愛の証って、いやこれはチョ――」
「私、横坂君がそれを食べなかったら、死ぬから。ここから飛び降りて。食べないってことは、私の気持ちを断る、つまり振るってことだから」
「――コだから……はぁ!?」
なんということだろう。彼女の論法はハチャメチャだ。僕は千綾さんのことは好きだけど、チョコレートを食べることはできない。僕がチョコを食べられない事実を知っていながら、極めつけに食べなければ死ぬ、だなんてとんでもないことを言い出した。死ぬ?彼女が?なんで。
「そんなこと……させるわけが」
「ほら、止めようとするでしょ。でもね、私は本気だから!」
なるほど確かに僕なら彼女を止めただろう―動けたなら。千綾さんは窓を開け放ち、手摺に手をかけた。ちょっと待てよ、本当に死ぬ気なのか?
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