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「待って、千綾さん!そんなのダメだ!『たかが』チョコレートだろう!?どうしてそこまでするんだ!」
「私にとっては『されど』チョコレートなの!」
しまった。つい「バレンタインには断る」という癖が出て、自分でも酷いことを言っている。 手元のチョコレートを見る。甘い香りが鼻孔をくすぐるが、恐怖が先行して手を出せない。でも、身動きが取れない今、駆け寄って窓から引き離すこともできない。
「横坂君が食べてくれたら、私は飛び降りない。私は、あなたが私の事を好きなの、知ってるし」
「……っ、バレてたのか」
いつバレたのか、それは今問題じゃない。
冷たい風が外から入って来ていて彼女はそれを直に浴びている。あまりこのまま放置するのはよろしくない。しかもここは三階。下手をすれば本当に彼女は死ぬ。
「私、横坂君がそれを食べてくれたら、恋人になって、あなたのこと絶対に離さないって、約束する」
どうやら千綾さんは本当に僕の事が愛しているみたいだ。目つきが怖い。本気も本気、本気過ぎる。
そして彼女は、トドメとばかりに爆弾を投下した。
「後一分だけ待つわ。さあ、どうするか決めて!」
「えっ、一分!?」
「私は私の愛をあなたに見せたわ。今度は横坂君、あなたの番よ。あなたの愛、私に見せて?」
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