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その場に座り込む千綾さん。僕も気持ちだけは床にへたりこんでいた。
「あの、これほどいてくれない?そろそろ足が痛いよ」
「ああっ、ごめんね」
縄をほどいていく千綾さん。しかし、やけに手際よく見えるのは気のせいだろうか?
体が自由になったのを確認して、僕は最も気になっていたことを千綾さんに質問した。
「ねえ、なんでこんな危ない賭けをしたの?もし僕が食べなかったら、君は死んでいた」
僕がチョコレートを食べない可能性は十分にあった。わざわざ飛び降りるなどと脅さなくてもよかったハズだ。
千綾さんは、何故か頬を赤らめながら、答えた。
「私ね、横坂君がどうしても欲しくて、それで賭けたのよ。私の初恋の人は横坂君。横坂君のことが好き過ぎて他の人を好きになる予定はなかった。だから、もし振られたら死んじゃおうって決めてたの。これが私の最初で最後の恋だから」
彼女の話は完全に「あなたが振るなら私は死にます」という脅迫そのものだ。不幸中の幸いは、その相手が僕だったことだろうか。
「だけど、僕が食べない可能性だってあった。寧ろ食べる可能性は限り無く低いって、君自身、分かってたんじゃないのか?」
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