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「勿論、それは承知の上よ。でもね、あなたが私の事を好きなことを知っていたから、きっと食べてくれると思って」
千綾さんは余程僕を信じているらしい。なんだかくすぐったい。
「でも、食べたら食べたで今度は僕が……」
千綾さんとの噛み合い加減はバッチリでも、今回それを媒介したチョコレートに関しては、相性最悪、バツだ。
けれど、千綾さんは、よくぞ聞いてくれました、と言わんばかりの自信に溢れた声で、言い放った。
「それはないわ。だってそのチョコレート……カカオ使ってないもの!」
……はい?
「イナゴマメ、って知ってる?それを使って、チョコレートを作れるの。カカオには少し劣るけどね。すごいでしょ?」
唖然とする僕を他所に、自身たっぷりに続ける千綾さん。
「え、じゃあこれは……」
僕がアレルギーを発症しないためのチョコレート。正確に言えば、カカオを使ってないので、チョコレートもどき、だろうか。
「言ったでしょ?『愛の証』だって」
そういうことだったのか。自分が如何に相手の事を想っているか。それを証明する為のもの。きっと、わざわざ調べて、作ってくれたのだろう。それが彼女の、僕への、『愛』。
「はは、あははは」
「ふふふ」
なんだか可笑しくなって笑ってしまった。恐れる必要は、無かったのか。
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