Ⅰ・バレンタインは甘い悪夢

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 だが、それは突然やって来た。 「……ぐっ!?」  何故か呼吸ができない。苦しい。しようとしても口からひゅー、ひゅー、と虚しい音が漏れるだけ。意識が遠くなる。目の前の女の子が慌てて「どうしたの?大丈夫?」と声をかけてくれるが、反応している余裕すらない。目の前が、真っ暗になった。             ☆   ☆   ☆  僕は病院に救急搬送された。大事には至らなかったが、医者から、君はカカオアレルギーだ、と告げられた。そして医者が、「2月14日に病院にチョコレートアレルギーでやって来ることを『バレンタイン症候群』なんて言うんだがね、はっはっは」などと笑っていたことを覚えている。そんなことで笑ってて良いのだろうか、医者のくせに。  まあ、毒を盛られた、なんて恐ろしい事でなかったのは良かったが、バレンタインに貰えるかも知れないチョコレートを食べられないと思うとショックだった。  その一件以来、毎年のバレンタインの日にやって来る女の子達の気持ちを断るようになってしまった。彼女達は皆チョコレートを持ってくるのだが、やはり、チョコレートを見るとあの一件を思い出してしまうのが大きい。 「今年も何事もなく終わればいいなあ……」     
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