Ⅰ・バレンタインは甘い悪夢

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 何処からか噂が流れたのか、一年生の時は誰からもチョコを貰わずに済んだ。チョコを貰わない事を喜ぶなんて畜生、と盛んな野郎達からは非難を浴びるが、食べられないのだ。仕方ない。  教室に入ると、野郎達が、やれ俺はチョコをもらっただの、やれお前にチョコは無いだの、どうでも良い事でお祭り騒ぎしている。やはりバレンタインは甘い悪夢の日だ。僕はチョコレートに怯え、他の野郎達は千載一遇のチャンスに乱舞する。そんなことを思って教室の入り口に立っていると一人の野郎が話しかけてきた。 「おうおう横坂ァ!お前今年もチョコレートを貰わない事を祈ってるのかあ?ハッ!おめでたい野郎だぜ!!」  訳がわからない。  野郎の一人はそう言って去っていった。また祭りの渦の中に戻ったようだ。  僕はロッカーと机を確認してから、ようやく席についた。
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