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「横坂君、今急いでるんでしょ?部活が終わって時間があるなら、私自分の教室にいるから……来て、くれない?」
本来ならばこれはごめんなさい案件だけど―。
「うん。分かった。じゃあ六時くらいには行くと思う」
―ここは彼女が僕の事情を知っているという一縷の望みにかけてみようと心に決める。
「ホント!?じゃあ待ってるね!」
パッと顔を明るくする千綾さん。ああ、可愛い……。彼女は振り返って戻っていった。心なしか足取りが軽快に見える。
彼女から二人で逢う約束をしに来てくれるなんてこの上ない幸せだったが、今はその事より他の女子を避けることだけを考えることにした。まずは、部活だ、部活!
☆ ☆ ☆
「……ふぅ。」
ようやく練習が終わった。時刻は六時を少し回ったところか。僕は足早に千綾さんの教室に向かう。……ここだけの話、彼女の事が気にかかって少し練習に集中できなかったのは内緒だ。
千綾さんがいるはずの教室に着いた……のだが、何故か電気がついていない。
「いないのかな……?」
もしや、時間を過ぎたことに怒って帰ってしまったのだろうか。
「いや、千綾さんはそんなことで怒るような人じゃないはずだ」
修学旅行の時、僕が乗る電車を間違えてしまったときも、笑って許してくれた。今回もきっと大丈夫だ。
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