第六話:九

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「もちろんです。坂本さんとぜひ」  その意味を一瞬考えた大だったが、素直に「はい」と頷いておく。 また一つ楽しみが出来たと嬉しくなると、その話題の中心だった本人たちは、竹男も交ぜて試食品を食べたり、雑談したりと楽しそうだった。  塔太郎も、月詠と業平から聡志の話を聞いたらしい。それに感化されたのか、 「ええなぁ、楽器。俺もいっぺん、体験できるとこ探してみよっかな」  と言っている。 お琴や三味線や、という話になっていく時、業平が塔太郎の顔をしげしげと眺めて、彼に似合う楽器を考えていた。 「坂本くんなぁ。そうだなぁ……ブブゼラはどうかね」 「せめて和楽器にして下さい」  となったので、皆で笑った。  この数年後、聡志は小さなライブ会場で笛を披露するようになり、やがてCDを出すまでに成長する。 しかし、それはまだ遠い、未来の京都の話である。 (終わり)
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