第六話:二

2/17
1350人が本棚に入れています
本棚に追加
/106ページ
明け方に通報を受けて、御池大橋下の川岸まで出向いた事故の事情聴取は、時間が伸びに伸びてすっかり日が昇っていた。 大の頬が朝日を受けてほのかに光り、六月から夏用となった制服の着物が、すうっと汗を乾かしてくれる。 爽やかな朝風に、大の袴がなびいたの見た目の前の女性は、 「まぁーあ白くて柔らかそうな肌だこと。そのお仕着せも、金魚が散っててお上品ねェー? でもアンタみたいな顔は昔ではブスだったからね。私らの方がよっぽど愛でられたかんね」  と、首から上は金魚の頭を振って、まとっている袿や緋袴をひれで煽ぎながら暴言を吐いた。 牛車の持ち主である彼女は自分が事故の原因であることに納得がいかないらしく、先程からずっとこの調子である。
/106ページ

最初のコメントを投稿しよう!