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【神殺し】  助けたいという願いは同じだったはずだ。俺も、アイツも。やっていることは変わらない。俺もファルスも。なんら変わらない、世界の理を壊す存在。 『――だとしても。貴方は自分の意志でここまできたはずです』  いつかのカランディスの言葉が頭の中をぐるぐると回る。確かに俺は自分の意志でここまできた。それは事実で。  目の前でファルスの首をもたげている神に長剣を向ける。震えは止まず、それでもなお、睨みつけた。 「お、なんだ? 『クリフ・ストラトフ』。お前が先に殺されたいのか?」  心臓が何かに掴まれているかのように締め付けられる。気づけば眼前にTシャツとジーンズ姿の中年が立っている。 「メイスつったか、こいつの娘。アレは返すことはできねーんだわ。いくらクローンを作ろうが、機械で魂を複製しようがすぐに壊れるだろうよ。贄ってのはそういうもんだ。まあ、そのおかげで世界が保たれてるんだからいいじゃねえか。なんでお前は――そんなにキレてるんだ?」  世界のための犠牲。神に捧げられた贄。神の言い分はいつもこうだ。 「……俺はメイスを連れて帰る。邪魔をするなら――斬る」  カタカタと震える長剣を握りしめる。この男に怯えている。潜在的な恐怖はじっとりと自分にまとわりついて離れない。 「そんな剣でか? はは、親も親なら子も子かよ」  男の手から雷が放たれる。焼け付く痛みに声すら出すこともできない。  それでも、倒れるわけにはいかない。メイス、カランディス、ベルベーヌ。アイツらのためにも――倒れるわけにはいかない。 「耐えるとはな……神殺しの名は伊達じゃなさそうだな、クリフ」  纏っていた空気が変わり、漆黒の瞳が俺を見据える。見た目はどう見てもただの中年男性だ。だが、その中身は――天界の最高神。
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