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家の玄関の扉を開けると、父さん・母さん・そら・とわがいた。
え!?なんで家族全員揃っているんだ。
驚くと同時に、俺は木藤を背中で隠しながら外へ出ようとした。
「あ!お姉ちゃんだ!」
「お姉ちゃん!」
まずい、先に妹が木藤を見つけてしまった。俺が黙っているわけにはいかない。
うそだろ、このタイミングで、木藤を紹介しないといけないなんて・・・。
「木藤さん・・です。」
そう言うと、一気に顔が熱くなって汗が出てくる。
「あおいちゃんよね。いらっしゃい。・・・お父さん」
母さんが父さんに目配せをする。
「ん?・・・ああ、そら、とわ。来なさい」
「え~、なんで?」
「お姉ちゃんと遊びたい」
妹は父さんに文句を言ったが、リビングへ行った。
「あおいちゃん、ご飯食べた?」
母さんが言うと、木藤は首を横に振った。
「何がいいかしらね?」
「あの・・・。いらないです」
木藤は首と手を横に振っていらないと言っている。
それなのに、母さんは気にもせずに言う。
「嫌いな物あるかしら?」
「無いです・・・」
「あら、偉いわね。流星は嫌いな物あるのよね~」
「母さん、言わなくて良いから」
もうこれ以上、余計なこと言わないでくれ。
「二人とも手を洗ってきなさい」
そう言うと、母さんはキッチンに入って行った。
木藤が困った顔をして、俺を見ていた。
今更だけれど、家に連れてきてしまって、本当に良かったのかなと思う。
「俺、寝てたから、まだ夕飯食べてないんだ。
それにさ、母さんの口癖『お腹が空いていると悪い事ばかり考える』って言うんだ。嫌じゃなければ食べてってよ。
あっ、俺が作るわけじゃないけど・・・」
「・・・うん。」
木藤が少し笑顔になった。
「とりあえず上がって、手を洗おう。」
俺は木藤を、洗面所に案内をした。
木藤は手を洗った後に鏡で顔を見ると、急にバシャバシャと顔を洗いだした。
いきなり顔を洗った木藤に、俺は少々ビックリした。
「はい、タオル。」
タオルを木藤にわたした。
「ありがとう」
木藤は顔を洗ったからか、顔がスッキリしたように見えた。
俺も手を洗うと、一緒にキッチンへ行った。
「流星、片づかなくて困るんだから、さっさと食べてね。
あおいちゃんは、ここに座ってね。おむすびは、おかかと梅干し。さぁ、召し上がれ」
木藤には、おむすびとみそ汁が出ていた。
「あっ、流星、ご飯のお代わりは無いからね。」
「えーなんで、無いんだよ」
「あおいちゃんに、おむすび作ったから無くなっちゃったのよ。だいたい、一緒に食べないのがいけないんでしょ。」
俺と母さんの会話を聞いた木藤が、おむすびの皿を俺の方に持ってきた。
「これ、一個たべて」
「それは木藤のだよ。食べな」
勝手に取ると、母さんの拳が飛んでくるんだよな~。
「ううん、一個で大丈夫だから」
俺が食べて良いのか迷ったので、母さんの顔を見る。
少し微笑んで、うなずいたのを確認する。
「サンキュ」
俺は皿から、おむすびを取った。
「あおいちゃん、この前はゼリーありがとうね。今日ここに来ていること、お家の人には言って来たのかしら?」
「あ・・・いいえ」
木藤は、少し戸惑いながら首を横に振った。
「きっと心配しているわよね。電話してくるわ。ゆっくり食べててね」
そう言って、母さんは電話をしにリビングへ行った。
「木藤、食べよう。いただきます」
「・・・いただきます」
リビングから母さんの声が聞こえて来た。
ヒートアップしてきて、だんだん声が大きくなってきたようだ。
「いえ・・・ですからね。・・・誘拐!?・・・待って下さい・・」
電話は長くなりそうで、しばらく終わりそうになかった。
「どうしよう」
木藤は辛そうな顔をして下を向いていた。
「母さんにまかせておけば大丈夫だからさ、心配しなくて良いよ」
「・・・うん」
食べ終わった皿をシンクに置くと、この後、どうしたら良いのかと考える。
今まで木藤を見てきて、お母さんと何かあるのはわかっていた。
木藤とお母さんのスマホの会話は、普通じゃなかったから。
厳しく監視して縛り付けて、自由が無いみたいだった。
母親なのにどうして、そんなことするのだろう。
俺に何が出来るだろうか?
俺の部屋なら電話の声も聞こえてこないかもしれない。そう思って木藤を誘ってみる。
「俺の部屋に来る?扇風機しかなくて、暑いけどさ。」
廊下に出て、リビングを覗くとまだ電話は終わっていなかった。
とりあえず母さんに、身振り手振りで俺の部屋に行くと教えて、木藤と階段を上がった。
「入って」
ヤバイ。木藤を部屋に入れるのなら、掃除しておけばよかった。
「・・・うん」
「座ろっか・・・」
今さら掃除するわけにもいかず、床に座るよりはましかと思って、俺はベッドに座った。そして、隣に座るようにすすめた。
扇風機からは、生ぬるい風しか来ないから暑い。
「暑くて、ごめんね」
まいったな、木藤がいるからなのか、緊張して変な汗が出てくる。
「ううん、・・・迷惑だよね。ごめんなさい」
「全然、迷惑じゃないよ。ホント、今日、電話もらえて嬉しかったし。困っている時には、いつでも電話してくれていいから。」
部屋に来たのはいいけれど、さて、どうしようか・・・。
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