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月影が照らす深い山林のなか、注意を凝らしてみるとあちこちで同様の音がしている。彼女は膝を抱いて俯き、それを遠くに聞いていた。
じょじょにそれも減ってゆく。
彼女と一緒に逃げていた同類のものが『彼ら』に倒され、はぐれ、彼女ひとりここに残っていた。
――来る。
彼女はそれを感じていた。
がさっ、と茂みが揺れた。
彼女が顔を上げる。
「こんな所におったか」
現れたのは年端もゆかぬ、元服もまだの子供――に見えた。
それが二人。
対照的な二人だった。
彼女の正面に立って、彼女を睥睨しているほうは鋭い目つきをしている。もう一人その少年の斜め後ろに立っているほうは柔らかな微笑を浮かべている。
だが、彼女は同類を圧倒的な強さで抑え込んでいったこの二人を目の当たりにしていた。
ただ、この二人に、皆、無力化されていっていた。
彼女は怯えた瞳で少年を見上げる。
最後か、と彼女の唇がわずかに動く。
正面の少年が口を開く。
「うまく人に化けたものよ。
町中におっても違和感ないような、な」
少年は護法童子、という。
人ではない。
不動明王の眷属、『鬼』の一種だ。
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