第一話 入国管理局特別審査第一部門主任の場合 ~異世界召喚編

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   その3 審査結果は予想通り  約一スルザン(2時間)後。  対象の試行錯誤の結果が形になって俺の目の前に出ている。 「作業が進んでいないようだから聞くが、この壊れた箱もどきが自動車なのか?」 「時間が足りないだけだ」  対象はそううそぶくが元気が無い。 「いや、足りないのは知識だ」  もういいだろう。  引導を渡してやる時間だ。 「確かに君は自動車という存在を知っている。使った事もあるだろう。でもその経験で自動車を作る事が出来るかといえば答はNOだ。エンジンやサスペンションの構造。ハンドル等舵操作の仕組み。君はそんな先人が苦労して色々開発したものを何もわかってはいない。ただ出来合いのものに乗っかって利用していただけだ。  それに鉄という素材自体も色々な性質がある。こういう乗り物に使うならそれなりの強度を持たせないと弱くなったり重くて使えなくなったりするんじゃないかな。只の鉄に見えるところも実は研究なり経験なりで微量の材料を混ぜたり加工法を工夫したり、色々な知識で成り立っているんだ。  それを利用しただけで知っている、作れるなんてのは先人の努力に対して大変におこがましい態度だ。そう思わないか」     
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