0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
1.歩くオレンジ色の鳥の巣頭
ネロリ・ビラガードを一言で表すと、“歩くオレンジ色の鳥の巣頭”だ。
明るいオレンジ色の髪は縮れて絡まり、爆発事故にあったような髪型である。
普段は離れの研究所に生息している。
が、ときおり城の中をぐるぐる歩き回っている姿が目撃され、何語かもわからないことをぶつぶつ呟いているらしい。
珍獣目撃情報のようである。
他国の視察で1ヶ月ほど留守にしていたノア・デ・ジェイスは、帰るなり飛び込んできたいくつかの情報に頭を悩ませた。
国王であり親友でもある剣術バカのロイは、隣の宗教国家から亡命してきた宗教家と科学者をすんなりと受け入れたという。
理由は、「美しかったから」だ。
これだけでも相当な頭痛のネタだった。
「亡命者をやすやすと受け入れるな!」
ノアの役職柄、国王を叱らずにはすまない。
宰相――国王を補佐するのが、ノアの仕事なのだ。
ロイが統治する国・エクランは面積のほとんどを山が占め、人口は少ないが宝石が取れることで有名だ。だからこそ周囲の国に狙われ、何度も戦争を繰り返した末に、諸国と不可侵の協定を結び、国の平和を保っている。平和の均衡を保つために常に中立であることが必要だった。
だからこそ、亡命者の扱いは慎重にせねばならないのだが……。
そうしてもう一つ、頭痛のネタがある。
ロイが美しいと評したのは宗教家の方で、科学者ときたらとんだ曲者――つまり、“歩くオレンジ色の鳥の巣頭”ネロリ・ビラガードのことなのだった。
最初のコメントを投稿しよう!