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ぼん!!
帰国した翌日、様々な報告を受けたノアは頭を抱えながら、問題の科学者を一目見に離れに向かった。
その矢先で聞こえた音である。
研究室に白い煙が立っていた。
王宮の敷地から火事が出れば一大事だ。
慌てて走り、離れの扉を開けた。
どっと白い煙が吐き出され、ノアは顔をしかめた。
「うえっほ!うえーっほ!」
……どうにも咳き込んでいるらしい声が聞こえた。
「おい、大丈夫か! 怪我は?! 火は?!」
まくしたてた声に反応はなかったが、かわりに煙の中から人影が現れた。はじめにオレンジ色の縮れ毛が現れ、丸眼鏡、白衣が現れた。白い肌も白衣も所々汚れていた。顎をさすり、俯き加減でどこかを見ていた。
「うむ。火を消すのに水属性の魔法はうまく作動したな。やはりサファイアとの相性は抜群か…。アクアマリンとの組み合わせはどうだろう」
ふと、その人は顔を上げた。
「ん? あんた誰だ」
分厚いメガネに、オレンジ色の縮れた髪、これといって特徴のない顔は噂に違わなかった。噂に重ねて、知らない相手に敬意を払う様子もない。
だからロイはどうしてこんな輩を国内に入れたんだ……!
怒りマックスである。
「私はノア・デ・ジェイス、この研究施設の管理をしている者だ」
努めて冷静を装い、ノアは微笑みを作った。
「この状況を説明してもらえますか?」
あー、とネロリの間抜けな声が研究室に響いた。
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