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「……かっこいい……」
吐息まじりにつぶやかれて、一瞬時間が止まった気がした。
「……は?」
「さっきまであんなにかわいかったのに。部屋に入るのにももじもじして。おひざとんとんとかするし。超かわいかったのに」
「あの……え?」
「なのになに? いま挿れてたの僕なのに。最初からこうだったみたいに……かっこいいの、ずるい」
「え、言ってる意味がよくわかんねえよ」
「……好きって言ってるの」
さんざん逸らして泳ぎまくっていた視線をようやく合わせて、押しつけるみたいにそう言った。いまにも泣きだしそうな潤んだ瞳がかわいくて、触れたくなって、でもさすがに痛そうでできないから、代わりにまぶたにキスをする。
「オレも好きだよ」
額と額をくっつけて、見つめあうよりも先に唇を寄せあった。
「ん……」
ねだるように開いたそこから舌を滑り込ませると、待っていた柔らかさがすぐに応じてくれる。言わなくても通じるものと、言わないと壊れてしまうものと、ひととひととの間はなんとも難解で不思議だな、とそんなことを考えたりした。
「星児、していいよ。さっきからずっと……このまんま、つらそうだし」
奏音の手が優しく触れてくる。するするとなでられて、思わず震えがきた。
「優しくできないかも」
「大丈夫だよ。僕の……星児より絶対緩くなってるから。平気だよ」
「そういう卑屈なこと言わないで」
「……星児は物足りなくならない……?」
あまりにも切実な声で問うから、言葉に詰まった。返す言葉がなかったんじゃない。
「ばーか。なんねえよ」
上体を起こし、奏音の腰の下に枕を押し込んだ。ばかとは言ったけれど、もちろん本気じゃない。そういう不安はわかる。身体だけじゃないとわかっていながら、飽きられるなら身体からかもしれないとか、ちぐはぐなことを考えてしまう。オレだっていつだってまだ、失うことを恐れているから。
「……ばかじゃないもん」
おとなしく足を開きながらも奏音が反論するから、それ以上文句を言わせないためにグッとなかに進んでいった。
「あ……っ」
「じゃあ、かわいいって言ったらいい?」
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