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あいつの綺麗な魂に触れて、曇りのない恋心を突きつけられて、なにかが変わるかもと思ったのに。
癒されてすべてが浄化される前に再会してしまったのはなぜなのだろう。
オレには綺麗になることは許されない?
心のままに誰かを愛することは許されない?
「なんならもう一回してやろうか」
顔のすぐ脇に片肘を着いて、角に追いつめる。
まだ微かに紅潮したままの頬も、潤んで崩れそうな瞳も、すべてが憎らしかった。
「……星児。やめてくれ」
「ハッ、どの口が言ってんの。してくださいお願いしますの間違いじゃなくて?」
「……そんなことっ……」
顔をグイッと近づけるだけで、彼の言葉はひくついた喉の奥へと消えていった。さらに唇が触れるギリギリまで近づくと、まぶたがギュッとかたく閉じられる。
期待から?
嫌悪から?
確かめなくても明白だ。
「おまえも呪われろ」
唇の前に落とした声は、思いのほか低くて他人のもののように聴こえた。
「ボクよりうまくおまえをイかせられる奴なんていないんだよ。男でも、女でもさ」
我ながらよくこんなに憎たらしい声が出せるなと思う。嫌われることばかりに集約していく、オレの口。
「……ボク……?」
不思議そうにつぶやかれた言葉は無視。おまえにオレを知る権利なんて与えてやるものか。
ただ、忘れさせない。許さない。
「思い知ればいい。奏音」
耳もとで名前をささやくと、ビクッとおもしろいくらいに肩が揺れた。
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