混線タイムライン∞カフェ

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 唯月は手先が器用で、小さい頃から創作する能力に長けた姉だった。中学も高校も手芸部。自分の服をデザインしてミシンをカガガと操りながら縫いあげたり、立体の折り紙がやたらうまかったり、ビーズで細かい細工のついたアクセサリーを作ったり。うちの両親にそんなDNAあったのかと不思議だったけれど、よくよくきいたら母方のばあちゃんがとてつもなく器用な人だったらしい。そしてその隔世遺伝はオレにはなかったらしい。  ともかく、チカはそんな姉にミサンガやらビーズ手芸やらを、真面目な顔して教わっていただけだったというオチ。コーヒー持っていってあげて、となにも知らない母さんに言われるまま従って、扉を開けた先に広がった光景はある意味異様だったと思う。  あのイケメン彼氏じゃなかったよ、と報告したときの最高に残念そうな母さんの顔は、いまだにオレの記憶に新しい。  そうして同時に、オレは気づいてしまった。  唯月は一応、美人の部類に入ると思う。よくモデルにスカウトされていたから、世間的にそうなんだろう。その唯月とふたりきりで部屋にいて、しかも結構密着した状態だったのに、チカからは下心がまるで窺えなかったのだ。  なぜだか同類を嗅ぎ分ける臭覚だけは並外れていたオレには、わかってしまった。
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