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それでも、出会う前から知っていたこと。
結城は、チカが好き。
それは明らかに事実で、頑なに会おうとしないチカに会うためにカフェに乗り込んでくるくらいの積極性があるほど強くて、揺るぎなくて、オレには動かしようがなかった。
チカは、結城を傷つけたくないからと、わざと深く関わらないよう距離を置いていた。彼の自分への恋心を知りながら無視をした。結城と奏音を重ねて。いまは舞いあがったまま付き合えても、いつかきっと奏音のように後悔して傷つくときがくると。その傷を、サクには背負わせたくない、とかなんとか。
奏音の話を引き合いに出されたら、オレはチカに協力せざるを得ない。チカの気持ちは痛いほど理解できた。だから、いくら結城がかわいくても、初日からわざとキツい先輩を演じ続けている。彼が「いやな先輩」がいるくらいでタイムライン∞カフェを辞めるような根性なしではないと、すぐに気づいてしまったけれど、それでも。チカが辞めさせたいと言うならば、オレはオレなりに対応するしかない。それは変わりようのないことだ。
奴は気づいているのだろうか、オレが結城に抱き始めている感情のことを。
知っても決して怒らない、チカはそういう男だ。むしろ「やっぱりね」くらい言われるかもしれない。
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