よれよれのリュックを今日は背負う

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今日、わたしはすがすがしい気持ちで家を出た。よれよれのリュックをしょって。 今日は、今日だけは、このリュックで出かけたい。 家を出て、いつも通り海沿いの道を自転車で進む。海のにおい。 いつも恥ずかしかったこのリュック、今日はなぜか誇らしい。 なんなら、目立つように胸の前にかけてもいいくらいだ。 一度、壊れかけていたジッパーが外れて、中に入れていたタオルが宙に舞った。いつもならイライラして拾いに行くところだけど、今日だけは、笑ってそれを受け入れることが出来た。 最高に気分のいい一日をおえて家に帰ると、わたしはそのリュックを置き、中身を残らずすべて出した。 向かい合い、合掌をして、深く一礼をしてから、わたしはそのリュックを、そっとゴミ箱に入れた。 いままで本当にありがとう。 中身を新しいバッグに移し替えるとき、その新しいバッグが昨日よりも頼もしくみえた気がした。 そうかあ、あのリュックの気持ちを、君が受け継いでくれたんだね。
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