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あけちゃダメ!
「え?」
オレの、机に、チョコが入っている。
バレンタインデーに、1ミリも関係の無い男だという自負があった。
生まれてこの方18年彼女はいないし、告白したこともされたこともない。教室の隅で同類の男たちと集まり、ゲームに興じるような人間だった。
そんなオレに初めて出来た「好きな人」。隣の席の小宮山かよという女だ。
彼女は皆に平等に優しく、こんなオレにも微笑みかけてお天気の話をしてくれたり、消しゴムをかしてくれるという聖女っぷりで、颯爽とオレの心をかっさらっていった。
だからもし、チョコレートをくれるなんていう奇特な人間がいたらそれは彼女以外はありえない。
オレは誰にも見つからないようにチョコレートの箱を鞄に押し込み、ほぼ駆け足で学校を出た。走って走って、近所の寂れた公園で足を止める。
夕方の公園は子供の姿もまばらで、空いたベンチに腰掛けた。
さあ小宮山のチョコレート、一体どんなものか。生チョコかトリュフかケーキか。
いやサイズ的にケーキはないか。両手に収まるほどの臙脂の箱を膝に乗せて、ピンクのリボンをそっと解く。
「へっ?」
箱の中にチョコレートはなく、メッセージカードが入っていた。
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