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直訳すれば『熱意なき集まり』である。一応は文芸部なのだが、とても部活動の名称に相応しいとは思えない。だが現に僕が所属していた部はそういう名前だった。
そして名は体を表すもので、ハートレスサークルではおよそ活動らしい活動はせず、ただ集まって喋ったり遊んだり気ままに部員で外出したりと自由にやっていた。
それでいいのかと部長である美玉先輩に聞いたことはもちろんあったが、『それでいいのだ』と自信たっぷりに返された。その根拠のない自信はどこからやってくるのか……聞いた僕が馬鹿だったとあの時は思ったものだ。
半年前から通わなくなったハートレスサークルで活動しているのは、沙凪だけだ。あのオストラシスの一件以来、彼女はたった一人で放課後を部室で過ごしている。それもあって僕らの関係はどこかぎこちなさがあった。
僕は沙凪に倣い、当てもない視線を窓の外に向ける。左手には無人の駅があり、右手には工場がそびえ立っている。その真ん中をレールが延々と続いている。美玉先輩は、この場所のこの景色を気に入っていた。
「美玉先輩、ここがお好きでしたよね」
沙凪も同じことを考えていたようだった。微風が彼女の髪をそよと膨らませる。
「わざわざここへ眺めに来たのか?」
沙凪は視線を外へ向けたまま首を振る。
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