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「いえ、用事のついでです。花屋木(はなやぎ)さんの家にこれを届けようと思いまして」
言いながら彼女は肩にかけた鞄から何かを取り出した。どうやらCDケースのようである。沙凪のような女子でも流行りの曲を聴くのだろうかと思ったが、よく見ればクラシックだった。それは実に彼女らしいといえるーーがしかし。
「クラシックを花屋木に? あいつはこういうものとは無縁だったと思うが」
そういう柄ではないのはたしかななので、疑問に思う。沙凪は首を振った。
「いえ、お貸しするのではないんです。お返しするんです」
「何? 花屋木が沙凪に貸したっていうのか?」
だがそれもまた彼女の答えはノーだった。苦笑しながら首を振る。
「『謎解き屋さん』の空木さんでも、これはさすがに難しかったようですね」
言って、沙凪は率直に解答を提示する事にしたようだ。
CDのケースを目の前で開帳することによって。
それは結果的にいって、僕は虚を突かれる形になった。
「これは」
あっけにとられてしまう。
ケースに収められていたのは見覚えがあるディスクだった。それはクラシックのCDなどではなく、そもそもジャンルがまるで異なっていた。
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